中小事業主による労災保険への特別加入
本来、労働者以外の人は労災保険による補償給付を受けることはできません。労災保険は労働者を守るための制度であり、経営者側の労災による損害を補償する趣旨で作られてはいないからです。
しかし、社会にはさまざまな規模の会社があるため、杓子定規に労働者以外を労災保険の適用から排除してしまうと不都合なケースもあります。中小企業の場合、経営者や役員など経営側の人間も仕事の現場で従業員と同じ仕事をすることが多く、彼らもまた労働者としての一面を強く持っています。そこで労災保険は中小企業に限って経営側の人も特別加入を認めているのです。
この制度は中小事業主特別加入と呼ばれ、労働保険組合を通じて申し込みをすることで経営側の人間も労災保険に加入できるという仕組みです。労働保険組合に労災保険事務を委託しなければいけない理由は、制度をより広く普及させ、かつ適正な事務処理と保険料の確実な徴収を行うためと説明されています。
中小事業主が労災保険に特別加入するためには、会社の規模が一定以下でなければいけません。これは使用している労働者によって区別されており、金融、保険業、不動産関係、小売業では労働者が50人以下、卸売やサービス業では100人以下、その他の事業は300人以下の会社でしか、中小事業主の特別加入はできないようになっています。
民間の保険に比べると労災保険の補償はかなり手厚いため、特別加入が可能であればできるだけ手続きをしておくべきです。